子どもだけのための保育施設を、誰もが自由に集まりつながる食の場に。
それが「おしゃべり食堂」
ここでは大人も子どももみんないっしょ。
ごはんやおかずには地域の食材や郷土料理がならび、それぞれが量を選んで食事をする。
園の周りで野菜を作ったり、園庭になっている果物を使ってみたり、みんなで食べる食事をおしゃべりしながら地域の人と作ってみる。
誰かが決めて指示するのではなく、みんなでその場をつくるために話しあい、得意技やモノを持ち寄っている。
そんな場にしたら、とても懐かしく温かく、誰もが子どもになれる場となり、心も体も自然に満たされるようになった…
おしゃべり食堂は、みんなの居場所であり活躍の場。それはゆたかな地域の姿そのもの。
この地域は、かつて人や物が行き交う街道のまちであり、自然に人がつながりあう、異質なものも受け入れるやさしいまちだった。
そんなことを思い出させ気づかせてくれる。
それが「おしゃべり食堂」
みまもりあうまち、
児玉
昔はあたりまえにあった地域の人のつながり。近所の人のことを気にかけ、ちょっとしたおせっかいをする。顔見知りがたくさんいて、困ったら声をかけあえる、あたたかい空気。ゆたかな自然と協力しあう農村文化をもつ児玉にはそんな日本の懐かしい姿があります。
しかし近年は少子高齢化が進み、地区の人口が減ると共に子どもたちも少なくなっています。暮らしを支える商店や福祉施設も減っていくなか、これからのまちづくりは、地域の人たちが主役となっていくことが求められています。
児玉の森こども園は、こどもたちの「じりつときょうりょく」を保育理念に掲げ、50年以上に渡り地域の子育てを担ってきました。自主性を引き出す「みまもる保育」というメソッドのもと、子どもたちの創造性とやさしさにあふれる行動によって、たくさんの気づきや驚きが生まれています。
将来の地域の担い手である子どもたちを中心に、まちのさまざまな人たちがつながることで、児玉は懐かしくて新しいまちとして続いていくと考えています。
児玉とは
埼玉県の北部のまち本庄市児玉町。
本庄の中心部はかつては中山道最大の宿場町として多くの人や物が行き交った歴史があり、児玉は養蚕のまちとして栄えた農村エリア。
「おしゃべり食堂」
って?
「食×おしゃべり」によって人がつながり合う地域をつくる食堂
みんなで食事を作ったり、食べたりすることで、さまざまな違いによる壁がなくなり、自然とおしゃべりが生まれる。
食は人との距離をなくすだけでなく、つながりも生み出す。
地域の人たちがおしゃべりをしながら、自分たちのつくりたいまちを、自分たちでつくる場…
それがおしゃべり食堂
「おしゃべり食堂」の
3つの特徴
1
食で人がつながる
場をつくる
園庭で育てた野菜や果物で食事をつくりみんなで食べることで、地域の自治の力を高め、防災や防犯につなげる。
2
気軽に参加できる
環境をつくる
それぞれに合った役割をその場で決めることで、気負うことなく参加できるため、さまざまな地域や年齢の人が集まれる。
3
地域の文化を
伝承する
この地域の先輩方から教わりながら、地域の食や文化を体験することで、地域の文化や暮らしの知恵を守る。
保育の特徴を活かす
保育施設の特徴を活かした居場所づくりをしたら、より人がつながる食の場になりました。
1
セミバイキング
配膳する子が、とりに来た子に、どれくらいの量が食べられるかを確認して盛り付ける。自然にコミュニケーションがとれ、自分で量を決めることから、責任感が生まれて食べ残しが減る。
残食が減って、ゆずり合う精神が生まれる
高齢の方は量が食べられないことも多く、子どもは苦手な野菜があるが、無理強いしないから、楽しく食べられる。他人のことを考える機会ができるうえ、食べ物が無駄になりにくい。
2
主体性を
大切にする
保育のさまざまなシーンで、保育者が見守ることで、子ども自身が考えて決めていく。一人ひとりの個性が大切にされるだけでなく、自立を促し、子ども同士が協力するようになる。
無理のない自治の関わり方が確立する
役割が与えられるのではなく、どんなことにチャレンジしたいか、ボランティア自身が毎回決めるため、急に休んで他の人に迷惑をかけることもない。気軽にチャレンジできて楽しめる。
3
デイリー
クッキング
日々の給食では、0歳児から、発達によって調理に関わっている。さまざまな経験をつうじて食材に慣れ、好き嫌いがなくなったり、食に興味が生まれて楽しく食べることができている。
みんなで用意することで、地域の絆が深まる
食材からメニューを考えたり、作り方を相談するなど、共に協力して食事を用意する。学生と高齢者といった年齢の壁を超えた会話が自然に生まれ、絆が深まり仲良くなる。
4
異年齢保育
子どもたちは異なる年齢が混ざり合うなかで日々を過ごしている。年下の子に配慮する心が育ったり、年上の子を見て真似をするなど、異年齢との関わりから刺激と学びを得て、心も頭も育つ。
高齢者はより元気に、若者は優しくなれる
準備や片付けの際にそれぞれの年齢のボランティアが混ざり合って協力する。高齢者は知識を発揮し、若者は力を発揮している姿が見られ、どちらにとってもプラスになる環境が生まれている。
支えるみなさん
おしゃべり食堂は、地域のたくさんの人たちに支えられています。
食材の提供、音楽や腹話術、テーブルを飾る花々、写真を撮ったり荷物を運んだり、関わり方は実に多様。
新たな仲間に声をかけあい、お世話になってまた関係が生まれたり、あたたかな循環が広がっています。
やさしい食の空間は、まちの人たち自身でつくりだしています。
保育士になりたい女子、卒園児の男子
かつての園児たちも大学生に成長し、手伝いに来てくれます。保育士をめざす女子は生き生きと子どもたちとふれあい、近所に住む男子は慣れ親しんだ地域の人たちに会うことを楽しんでいます。
行政や団体の人たち
社協から地域の活動のサポートのためお手伝いに来ていただいたり、行政や地域団体のみなさんにも支えられています。地域メディアの取材も活動の励みになっています。
地域の商店の人
園の給食で使う野菜を提供してくださる八百屋さんや農家さん、毎回食材の支援をしてくださるお肉屋さん、ボランティアとして毎回参加のガソリンスタンドさん、さまざまな商店の方も応援団です。
特技で活躍する人
近所にお住まいの昔は幼稚園の先生、こども園の卒園児のおばあちゃま。アコーディオンと腹話術が得意で、食事のBGMの演奏、子どもたちが恐る恐る近づく人形で、場を楽しくしてくれています。
地域の学校、学生さんたち
こだま高校は、農業課と工業課それぞれが総合的学習の場として参加。上武大学は野球部のたくましい学生さんが10キロの道のりを自転車で駆けつけてくれます。
近所の先輩お母さん
地域には心強い子育ての先輩たちがいます。例えば元保育士のベテランお母さん。季節の野菜や花々を育てながら、暑い日の水分補給、野菜の収穫体験など、地域の子どもたちと交流しています。
保育施設を起点とした
まちづくり
保育施設は、長年にわたり子どもをつうじて地域の関係性を築いてきました。
これを生かした食の場をつくることによって、まちの人たちの新たなつながりや役割が生まれ、
まちに必要なことは自分たちの手で作るという意識が育っていきます。
そして、活動はまちへと広がり、日々の暮らしをゆたかにし、災害などの有事には助けとなっていきます。
地域活動のサポート
子ども・若者の地域教育、行政や地域団体との協働
地域の自治力の向上
災害対応力の強化、空き家活用、食の場の広がり
新たな活動の創出
理想のまちの姿を描く、ほしい場やお店をつくる
これからの歩み
保育施設がまちづくりを担う存在に
子どもの減少や施設の老朽化などにより、全国各地の保育施設で統廃合が進んでいます。小さなまちには保育施設は一つしかないことも多く、保育施設がなくなると、子どもを育てる環境がなくなってしまいます。
日本の地域には、それぞれ素晴らしい特徴があるにも関わらず、依然として都市に人口が集中しており、この傾向はより加速していくようにも見えます。
個性ゆたかな能力をもった子どもたちには、自由度の高い環境や関わる人の多様性が必要です。保育施設は、子どもを起点として、親だけでなく祖父母も関わります。
また、給食の食材業者や農家、園を直す大工さんなど地域の事業者や行政などたくさんの人とのつながりがあります。保育施設の役割をまちに広げていくことで、地域の子育て機能を維持しながら、まちの人たちみんなで子どもをみまもり育てていくことで、まちに活気とつながりが生まれます。
私たちは、児玉のおしゃべり食堂から、さまざまな地域にこの取り組みが広がってほしいと考えています。
サポート
&
パートナーシップ
わたしたちは、個人や団体、企業のみなさまと、
この活動をつうじて共によりよい社会をつくっていく「仲間」になれることを願っています。
内容や関わり方については、個別に意見交換しながら形にしていきたいと考えています。
お気軽にお問い合わせください。
サポートいただきたい内容
- 活動資金の寄付
- 物品や食材の提供
- 人的なお手伝いや参加
- その他、独自の協賛プログラムなどによる支援
使い道
- おしゃべり食堂の運営(食材や備品の購入、その他経費)
- 食農活動の資材や運営
- ここから新たに生まれる活動へのサポート
パートナーシップ型の協働の例
- 教育機関の授業や課外活動
- 学生や社会人のインターン
- 学術機関の研究やフィールドワーク
- メディアでのご紹介
- 企業の社会貢献、人材育成など
自分たちの地域でも取り組みたい方
- 自治体のまちづくり(新しい自治、インクルーシブまちづくりなどのテーマ)
- 保育施設による子どもを中心としたまちづくり
- その他、食や子育てをテーマとした地域のプロジェクト企画・推進など
冊子を
ご覧いただけます
おしゃべり食堂の内容を紙冊子にしました。下のボタンよりPDFファイルの閲覧・ダウンロードが可能ですのでご活用ください。